愛プチ
ここまでが私のトラウマの大きな要因となった出来事である。

はじめてここまで詳しく誰かに全て話したな。
数年経った今でも胸が苦しくて痛くてたまらない。


すべて話終えて少しぬるくなってしまったホットミルクを一気に飲み干した。

ずっと黙って聞いてくれていた美月君は反応に困っているのか難しい顔をしたままじっと床をみつめている。

なんか困らせちゃったかな・・・。
「すみませんなんか、暗い話を延々としちゃって・・。
ゲーム・・しましょうか。」

立ち上がった私に対し、美月君はやはり床をじっとみつめたまま動かない。

そんなにまずい話しちゃったかな・・。

「・・じゃないから。」

小声で美月君が何かつぶやいた。

「お前、ブスじゃないから・・。」
唇を少しとがらせムスッとした顔でリビングをでていこうとドアを開ける。

なんでそんなムスッとして・・。
ていうか・・散々ブスって言ってたくせに・・。
彼なりに気を使ってくれてるんだろうけど。

「はやく部屋行くぞ。
今日絶対レアアイテム取らなきゃなんないし凹んでる暇とかないから、てか寝かせないから。」

こちらを振り向かずにそれだけ言い残して二階へと上がっていった。

照れ隠しなのか、なんなのかいつもと変わらない言葉なのに少し雰囲気が丸くなった気がするのは気のせいだろうか。

しかし、この優しさに甘えるだけじゃだめだ。
ゲームをする前にやる事がある。
トラウマをちゃんと話すべきなのは美月君じゃなくて進藤さんの方だ。

美月君の部屋に行く前に、進藤さんにメッセージを送った。
今日の事の謝罪と、話たい事があるからまた近いうちに会いたいという旨をかいて。
電話をする程の気力はもう私には残っていなかった。

うじうじしていてもしょうがないのは身に染みてわかっている。
前への進み方が分からないならあとはもうひたすらもがくしかない。
全てが時間が解決してくれるとは限らないのだ。
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