愛プチ
あの家に帰るのは二年ぶりだ。


そう、私が母方のおばあちゃんと一緒に住んでいたあの家。

就職先がここに決まって一人暮らしは怖いからと、高校を卒業して就職すると同時に私はおばあちゃんの家に転がりこんだ。

いつも優しくて、おばあちゃんの事が大好きだった。

だからこそ、おばあちゃんが二年前に亡くなって以来、あの一人で住むには少し大きな家での生活に耐えられなかった。

どこを見渡しても何をしててもおばあちゃんとの生活が家中に沁みついていて、辛くなってしまうから。

だからあの家にはおばあちゃんが亡くなってからは行っていない。

小さいけれど昔ながらの温かみのある家で、たまにお母さんが掃除しに来たりしてるらしいからそこまで荒れてはいないはずだけど。。

電気とかは通してもらわないと使えないかもな。


そんなことを考えながら道をあるいた。


家の前に到着して深呼吸をする。

ここは二年前と全く変わっていないんだな。
まあ、二年前から何も変わっていないのは私も同じなんだけど。

鍵をガチャリと開けて中に入る。

息をすった瞬間胸いっぱいに懐かしい家の匂いが広がった。

おばあちゃんの匂いだ。

玄関を上がり、とりあえずリビングに入る。
つかないかもしれない電気のスイッチを入れてみるとパッと視界が明るくなった。

「懐かしいな。。」

昔と同じ風景に、今でもどこかからおばあちゃんがおかえりと言ってひょっこり出てくるんじゃないと思ってしまう。

でも、、なんか、、
なんだろう、、なんていうか、、

なんっっっか妙に生活感があるのは気のせいだろうか?

なんかこう、、これといって変わったところはないんだけど誰かが住んでる感じがするというか、、心なしかテレビも新しくなってるような、、。


お母さんがたまに泊まりに来てるのかな?

それにしてもなんとなくどこか違和感が、、。

しかもなんか足音とか聞こえてきたし。。

え、まさかのホラー展開?

これラブコメだよね?
ホラーなの?!

頭の中でプチパニックを起こしていると、奥のドアがバンっと勢いよく開いた。


「帰ってくんのおせーよ兄貴!!
また洗濯物のポケットにティッシュ入ってたぞいい加減にしろ、、
って、、、、、」


喋りながらはいってきたのは見覚えのある顔というよりは私が今一番会いたくない人物。


「ななななんで、あなたがここに、、、」

震える手で指を指すと、向こうも同じように指を指してくる。



「お前こそなんでここに、、、」

そう、私が今指を指しているのはさっき見事なまでに最悪な別れ方をした美月君である。

それよりまって、これどういうこと?

なんでうちにあの子がいるわけ?!

私家間違えた?!
あれだけ懐かしんどいてあれだけど、もしかして間違えた?!

いやでも、鍵も合ってたからそれはないよ!間違えないよさすがに!

じゃあなんでいるのかってことだけど、、。


だめだ今日は脳みそ使い過ぎてパンクする!!

誰かこのめちゃくちゃややこしい状況を説明して、、、。


何からどう話せばいいのか頭を抱えた瞬間もう一発悲劇が起こった。

「ただいまー。」

玄関の方から男の声がする。


美月君もしまったというような顔をしており、一体誰なのかわからない私は更に頭を抱えるしかない。


「今日は合コンって言ってたのに家に帰ってきてるんだ珍しいね、、」

話ながら部屋に入ってきたのは、目の前にいる美月君と同じ顔の美形の青年。


いや、青年というよりかは、大人の男性、、?
美月君の数年後という感じ、、。

そして私をみるやいなや固まる。


「、、、て、誰、この人?」

いや、私が聞きたいよ!
誰なんですかあなたこそ!!

今はこっちで手一杯なのにややこしい人がもう一人増えてどうする!!

「いや、兄貴こいつは、その、、」

言い訳をしようと美月君が口を開く。


って、兄貴やったんかい。

だめだ、頭おかしくなりすぎて関西弁になっちゃった。

顔めちゃくちゃ似てる時点でちょっと感づいてたけど。


そしてめちゃくちゃ不信そうにじろじろ見てくる、、お兄さん、、。


だめだ、このままじゃ私がいたたまれない、、。
ちゃんと説明しないと、、。
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