愛プチ
そして今、深夜に差し掛かろうという頃、私はイケメン二人の前で正座をしていた。

なぜ、私が正座を、、。

でも、一通りの事は説明した。
美月君との事以外は。


「怪しんでしまって申し訳ありませんでした。
ここに住んでいた方だったんですね。」

弟と違い、なんとも穏やかなお兄さんだ、、。

冷静に話を聞いてくれ、話も通じる。


「火事とは大変でしょうし、実家も遠いとの事なので空いてる部屋で良ければしばらくの間はここに住んでください。
あなたのお母様の大家さんにも家賃をだいぶまけてもらっていて、かなりお世話になってますし。」

お兄さんの提案に思わず飲みかけていたお茶を吹きかける。

一緒に?!しばらく住む?!

男二人の家に女一人で転がりこむの?!

「いやいやいや、それはさすがにできません。
元々住んでたとはいえ、今はお二人の家なんですし、やっぱり急に転がりこむのは気が引けます。」

あたりさわりのないように、遠慮をして断る。
だいたい元々の私の性格はヘタレなのだ。
こんな大胆な決断ができるわけがない。


「ぜってーやだよこんな女!!
ろくな奴じゃないぜ!!」

しかし私が遠慮してから、美月君がすかさず口をはさんだ。

今までケータイばっかりみてて大人しくしていたと思ったらこの野郎。。
こんな女とはなんだこんな女とは!失礼な!!


「ああ、そういえば二人は知り合いだったんだっけ?」

お兄さんが軽く口にしたその言葉にヒヤリとする。

何故今日はこうもピンチが次から次へと、、。


「ほっとけよ、どうせ他人の事なんか興味ないくせに。」

べらべらと先週のところから経緯を話されるのかと思ってビビったけど、彼もかなり疲れているのかそういう気はなさそうだ。

そのことに少しほっする。

「ちょっとした、知り合いなだけです、、。」


そういって言葉を濁すと、分かったのか分かってないのかは知らないが、お兄さんもそれ以上の詮索はしてこなかった。


「でも知り合いなら余計にうちにしばらく泊めてあげるのが筋なんじゃないの?」

お兄さんが美月君にそう優しく提案する。


「そんな、ほんとに私は大丈夫でs、、」

「ああ?!やだよ!ぜってーやだ!
俺は絶対反対だからな!!こんなブス!!
はやく帰れよ!」

美月君が言葉を発する前に遠慮をしようとしたが、それはあっけなくかき消されてしまった。

ブスという言葉が頭の中でこだまする。

”こんなブス”
”こんなブス”
”んなブス”
”なブス”
”ブス”
”ブス”
”ブス”

・・・。
・・ブス。
はっきりと二文字。
彼はそう言った。


ああ。

言ってしまったわね。

私にその言葉を。

私にとっての最高の呪いの言葉を。

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