キミは当て馬、わたしはモブ。
推しカプに忍び寄る危機
わたしの名前は佐久良和花。男女の幼なじみカップリングが大好物な、ごくごく一般的な高校二年生だ。
最近わたしは、あるクラスメートが気になってしかたがない。
わたしの後ろ席に聞き耳を立てる。そこでは、男女が隣同士の席で雑談をしていた。
「モテたい」
「鏡見てこい」
「イケメンにモテたい。甘やかされて、アカネは何もしなくてもいいよって寝転びながら頭を撫でられたい」
「ヒモじゃねぇか」
「金持ちにモテたい。毎日お菓子を作ってくれるシェフがいて、アカネは何もしなくてもいいよって寝転びながら頭撫でられてチョコレート食べたい」
「菓子食いたいだけだな」
「石油王があたしの顔好みだったりしないかな」
「急になげやりになった。しない」
「……優斗、あんたさっきから否定しかしないけど、あたしの悩み真剣に向き合ってる?」
「だってアカネがモテるなんて温泉堀り当てるより難しいだろ」
「だから、どうやったらモテるのか相談してるんじゃん! ターゲットを絞るために好みも言ったし!」
「理想が高すぎる」
――はあぁぁぁあ良い……!!
こちらはわたしのクラスメート、中村優斗くんと辻アカネちゃんだ。
お互い恋愛感情ゼロ、しかも幼なじみ。こんなにわたしの好みを詰め込んだ男女がすぐ近くにいるなんて、どんなに幸せなことか。
盗み聞きをするだけで心が満たされる。
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