キミは当て馬、わたしはモブ。


 気を取り直して意識を戻す。


 言い逃れできる空気ではなかった。帝塚くんはわたしからの答えを待っている様子だ。



「えっと……」



 わたしが、わざわざ盗み聞きなんてしにきた理由かぁ。


 それは、わたしが……。



「………告白、受けちゃうのか気になったの。それだけ!」


「どうして佐久良がそんなこと気にするんですか?」


「な、なんだっていいでしょ!」


「気になります」



 そんなこと言われても……!



「教えてください。佐久良の気持ち」


「エッ」



 ドッキン。


 い、いや、なんでドキッとしたの今。


 いたたまれなくて帝塚くんから距離を取ろうとしたら、後ろは壁だった。


 前には帝塚くん。逃げられない。


 帝塚くんはわたしに被さるように見下ろしてきている。長いまつげが瞬く度、なんだか見惚れてしまう。


 あ……かっこいい……。


 ――はっ!


 何!? わたしの思考どうかしてる!


 ちょっと待ってよ。自分の気持ちに付いていけない。


 だって、ついこの間までうっとおしく思ってた相手だよ!? アカネちゃんのことを諦めたとはいえ、早すぎない!?


 ……早いとか、そういうことでもないんだけど!

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