キミは当て馬、わたしはモブ。


 帝塚くんの反応を確認すれば、彼の考えていることは手を取るようにわかった。


 その気が全くないのである。


 何言ってんだこいつ……とまでは行かないにしても、建前上の頷きさえ寄越さない。


 聞く耳を持っていないようにしか見えないのだ。



「え、なに……嫌なの?」



 拍子抜けだ。帝塚くんに向けていた指はへにゃりと曲がる。



「あ、そうではなくて……。この先佐久良を越える人なんて、存在しないような気がして」


「な……っ」



 何言ってんだこいつ!



「それは、帝塚くんの人生の選択肢が狭まることになるんじゃないの!?」



 わざとらしくそっぽを向いて突っぱねれば、帝塚くんは「それは、確かに……」と肯定する。だけどやっぱりはっきりしない態度。


 わたしの心臓はドックンバックンと大きく波打っていて、身体全体が火照っていく。


 なんなんだ。一体何を考えているんだ!?


 わたしのことが好きって言うなら少しは楽になれるのに!


 違うのはわかってるんだけどさ……。



「佐久良は……」



 帝塚くんの表情は読めない。


 何も考えてないような、悲しいような、穏やかな、どれともとれるような表情。



「俺の……」



 帝塚くんにとって、わたしって……。

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