キミは当て馬、わたしはモブ。
そこでタイミング悪く予鈴が鳴った。
わたし達を取り巻いていた不思議な空気がパッと消える。
「……」
「……」
「……行きましょうか、教室」
「そ、そうだね」
――みのるくん、わたし、気付いちゃった。
現実だからって、近付けるわけじゃないんだ。
今も、あと数センチで彼の手に触れることができるのに、それができない。
ゲームなら、わたし自身は動かなくていいからこんな緊張したことなかった。
でも。でもね。
触れることができる可能性はあるんだよ。
ゲームならそんな可能性はゼロなの。
だから……。
ちょっとは、頑張ってみるのもありなのかなぁ……?
たとえ、相手にとってはただの友達でしかなかったとしても。
わたし、新しい恋をしてみてもいいのかなぁ……。
触れてみたいな、キミに。
前を歩く帝塚くんの背中に、少しだけ近付いてみる――。
それが、わかったのかは知らないけど。
独り言のつもりでも、偶然に聞こえてしまった。
「……佐久良のこと、友達だと思ってないのかもしれません」