キミは当て馬、わたしはモブ。




 わたしにとって、帝塚くんは――。


 友達で、そしてたぶん、好きな人でもあって。


 帝塚くんが言う大切な人っていうのは、本来こういう気持ちのことなんじゃないかって思う。


 帝塚くんにとって、わたしって……?



「今日は、中村と帰ります」



 ホームルームが終わるや否や、帝塚くんからそう伝えられた。


 一緒に帰る約束なんて、今までしてなかったけど……。なんて、可愛くないことは言いたくないので我慢。


 帝塚くんの隣には頼まれて断れなかったであろう中村くんが、「あはは……」と笑っている。


 あ、もしかして……わたしが新しく友達を作れって言ったから?



「えっと……。佐久良さん、もしよかったら、アカネと一緒に帰ってもらえないかな?」


「あ……わ、わかった」



 そしてわたしも、中村くんからのお願いを断れない側の人間だった。


 ギクシャクした様子の中村くんが帝塚くんに付いて教室を出ていく。


 そりゃ……今まであの二人って、一緒に遊んだことがあるのにもかかわらず、友達と呼べるような関係でもなかったもんなぁ。


 中村くんなら、大丈夫かもしれないと安心するわたしがいる。


 わたしの方が、まだ帝塚くんに好かれるっていう安心……。

 
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