キミは当て馬、わたしはモブ。


 そんなとき、帝塚くんがパッとスライドを切り替えた。


 そこには――



「俺のこと、好きですよね? 佐久良」



『俺のことが好きなところ』


 なんて自意識過剰なんだろう。うぬぼれすぎだ。


 でも全然嘘じゃない。


 今まで帝塚くんが挙げてきてくれた言葉は、恥ずかしいけど全部合ってるんだ。


 そう、だから、これも……。



「…………うん。お兄ちゃん、わたし、帝塚くんのこと……」



 ……大好きなの。


 そう口を開いた、ときには。


 お兄ちゃんはすっかり死んでいた。


 勝者、帝塚くん!



「じゃない! 死んだふりすんな!」



 思いっきり揺さぶるとお兄ちゃんは余計に目をきつく閉じてしまう。


 こっちは現実と向き合ってるっていうのに、お兄ちゃんは逸らすの!?


 わたしが言うのもなんだけど、現実を見ろ!



「ちゃんと聞いて! わたしの大好きなお兄ちゃんなら、聞いてくれるはずでしょっ!?」



 お兄ちゃんの耳を引っ張りながら叫ぶ。


 すると、カッと目を見開いてわたしの腕を掴んだ。



「……誰のことが……大好きだって……?」



 ん?


 もしかしてこれ、悪手だった?


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