キミは当て馬、わたしはモブ。
無駄なあがきだったと、後のお兄ちゃんは語る。
顔のパーツを中央に集めるかのごとくぎゅっと凝縮されたお兄ちゃんの泣き顔。
わたしは、お兄ちゃんが本気で泣いているところを見たことがなくて動揺していた。
「……お兄さん、大丈夫ですよ。佐久良はちゃんとお兄さんのことも好きだって伝わってきます」
さっきまで言い争っていたというのにうって変わって、帝塚くんがお兄ちゃんの背中をそっと擦る。
帝塚くんがすこく優しい微笑みでお兄ちゃんに接しているのを見て――嫉妬心がふつふつと沸き上がってきたんだけど……?
「……帝塚、くん……」
お兄ちゃんも帝塚くんを見上げ、二人は見つめ合う形となった。
ねぇ、なんで二人がいい感じになろうとしてるのかなぁ?
さっきまでわたしの取り合いみたいなことをしてたくせに、急に置いてきぼりにするのはおかしくないかなぁ?
心のムカつきを抑えきれずに、露骨に表情に出てるっていうのに。
二人は全然こっちを向いてくれない。
こういう状況にしたのは、わたしだけど!
どうするべきか考えた結果、わたしは二人に向けてずんずんと近付き、
「やっぱりどっちも大事だよ!」
まるごと抱き締めることにした。
……別に、こっちを見ないから気を引こうとしたわけじゃないし。