キミは当て馬、わたしはモブ。
「和花……」
お兄ちゃんが抱き締め返してくれる。
帝塚くんからの反応がなくて確認したら、少し頬を赤くして手を宙にさ迷わせていた。
いや、なんで散々手とか握ってきたりしたくせに今さら恥ずかしがってるんだよ。
しばらくしてお兄ちゃんの手が離れたので、わたしもそれに続く。
優しく笑ってくれるお兄ちゃんは、いつかの――わたしがみのるくんを諦める決心をして泣いたあのときと、おんなじ顔をしていた。
やっぱりわたしの大好きなお兄ちゃんだと再確認をする。
「負けだ。お兄ちゃんの、完敗だよ」
「お兄ちゃん!」
これで、ようやくわたしと帝塚くんは……!
と、お兄ちゃんが帝塚くんにぐいと顔を近付けた。
「ただし和花を泣かせたら許さんおまえは少しは良いやつかもしれないが完全に信用したわけじゃないことを肝に命じるんだな」
目をかっ開いて帝塚くんに詰め寄るのは恐怖を与えるためなのだろうけど、そんなのは帝塚くんには一ミリもダメージにならない。
彼はただ嬉しそうに笑って、こう言うだけだ。
「もちろんです」
こうして、対お兄ちゃん戦はなんとか幕を閉じたのだった――。