キミは当て馬、わたしはモブ。
★
「今回も、なんだかんだ佐久良に助けられてしまいましたね」
「……帝塚くんのプレゼンが相当効いてたんでしょ」
帝塚くんを駅まで送るための、ちょっとだけの散歩デート。
せっかく隣だし、二人きりだし、手を繋ぎたいなと伸ばしたけど途中でやめた。
……ね、わたし、ちゃんと言葉もらってない。
待つって思ってたけど、ここまで来るとなぁなぁになってしまいそうで怖い。
わたしからはほとんど好きって言ったようなものなのに、帝塚くんからの言葉は全くないの、なんなのかな。
正直、わたしは焦っていた。
帝塚くんがなかなか告白をしてこないのは、もしかしてわたしのことをキープにしてるんじゃないかって。
そんな人じゃないっていうのはわかるのに、どうしても不安でそんなことを考えてしまう。
つまりは、好きなのはわたしだけなんじゃないかって、思っちゃう。
「……佐久良?」
そんなことをぐるぐると考えていたら、帝塚くんがわたしの名前呼んで、わたしの手にそっと触れて……。
「――っ! いやっ」
それをわたしは、払いのけてしまった。
一瞬でいやーな空気が溢れ出す。
……やばい。やっちゃった。