キミは当て馬、わたしはモブ。





「今回も、なんだかんだ佐久良に助けられてしまいましたね」


「……帝塚くんのプレゼンが相当効いてたんでしょ」



 帝塚くんを駅まで送るための、ちょっとだけの散歩デート。


 せっかく隣だし、二人きりだし、手を繋ぎたいなと伸ばしたけど途中でやめた。


 ……ね、わたし、ちゃんと言葉もらってない。


 待つって思ってたけど、ここまで来るとなぁなぁになってしまいそうで怖い。


 わたしからはほとんど好きって言ったようなものなのに、帝塚くんからの言葉は全くないの、なんなのかな。


 正直、わたしは焦っていた。


 帝塚くんがなかなか告白をしてこないのは、もしかしてわたしのことをキープにしてるんじゃないかって。


 そんな人じゃないっていうのはわかるのに、どうしても不安でそんなことを考えてしまう。


 つまりは、好きなのはわたしだけなんじゃないかって、思っちゃう。



「……佐久良?」



 そんなことをぐるぐると考えていたら、帝塚くんがわたしの名前呼んで、わたしの手にそっと触れて……。



「――っ! いやっ」



 それをわたしは、払いのけてしまった。


 一瞬でいやーな空気が溢れ出す。


 ……やばい。やっちゃった。

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