キミは当て馬、わたしはモブ。
とぼける演技をするわたしに、帝塚くんは悔しそうに唇を噛み締める。
にやけが抑えられなくて口角を上げると、意表を突かれたと言わんばかりに目を丸くする。
ここまで帝塚くんが表情をころころ変えるのも珍しい。
それだけ動揺してるってことなんだろうか。
「……わかりました。い、いいですか、佐久良」
「うん?」
「お、俺は……」
「うん」
今度は顔が強張って、いつもの数倍眼光が鋭い。
わたしはそれに笑うのを堪えながら待つ。
端から見れば、睨む男と睨まれて笑いそうになっている女というなんとも奇っ怪な光景だ。
「さ、佐久良のことが……」
「……うん」
じわじわと赤色の範囲を広げて、耳まで到達している彼を見つめる。
わたしのためだけに慣れない表情をしてくれるこの人が、
「すごく、…………好き、です」
「わたしも」
「えっ、早、え?」
帝塚くんが戸惑うのも無理はない。
わたしの返事は一秒の間もなかったから。
ていうか、何言われてもこう返そうって決めてたし。
「そ、ですか……。それは、よかったです」
「うん、わたしも好き」
「えっ、さ、さっき聞きましたけど……」
「ううん、ちゃんと言葉にはしてないもん。わたしも好き」
「さ、佐久良……?」
リミッターが外れたように、わたしの口から気持ちがあふれでてくる。
恥ずかしいとか考える前に、どんどん。制御不能になってしまった。