キミは当て馬、わたしはモブ。


 言葉にすると実感が沸いてくる。言葉にする度に、その気持ちがもっと膨らんでいく。


 わたし、この人のことが好きなんだ。


 ふぅん、やっぱりね。わたしはずっと知ってたけどね。



「佐久良、恋人に……なってくれますか?」


「ばか。ここでならないとか、ないから」


「……はい」



 今度こそ、自然に手を繋ぐ。どちらからともなく、どちらも拒否することなく。


 なんかすごい。こんなに幸せな気持ちになるんだ。


 頭の悪い感想しか出てこないけど、帝塚くんの嬉しそうな顔を見たら、そうなっても仕方ないと思う。



「帝塚くん、その顔、学校で見せないでよね」


「え? どうしてですか?」


「……第二モテ期来ちゃうかもしれないでしょ」


「ああ、そのことなんですけど」



 そのこと?


 待って、変な話の広げ方しようとしてない?



「手紙の差出人が不明な人ばかりで、返事ができないんですよね。どうしたらいいんでしょうか」



 ……は?


 今、彼女になった人の前で、そんな話する?


 ムカついた。非常にムカつきました。


 幸せな気持ちと相殺されて無になります。



「……」


「あれ、佐久良?」


「……」


「何か怒ってますか?」


「……知らないっ!」



 好きにしろ!



「佐久良、好きですよ」


「もうそれは通用しない!」


「そんな、早すぎます」



 あんなに告白をもたつかせていた人物の台詞とはまるで思えない。


 やっぱり、わたし達に甘い雰囲気はまだ早いのかも……。

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