キミは当て馬、わたしはモブ。
ラブ・イズ・オーバー
『――――幸せになってね。』
彼がそう言ったのは、本当にただのサポートキャラとしての文言だったのだろう。
しかしあのときのわたしには、そのときの彼の顔がひどく寂しそうに見えたのだ。
当時のわたしの脳内で、みのるくんが好きなのは、ゲーム内のヒロインである『わたし』。
『わたし』は……佐久良和花のことでは、ない。
だからわたしは失恋をした。
それだけの話。
「えーっ! 付き合い始めたの!?」
学校で会って一番に報告したのはアカネちゃんだった。
おまけのように隣にいた中村くんも聞いてたけど。
「すごい、すごい! おめでとー!」
パチパチと笑顔で拍手してくれる彼女は天使そのもの。
中村くんは一言だけ「おめでとう」と言うと自分の席に着く。対極的な反応だ。
「あたし最近思うんだけど、お互いがお互いを好きになるってほんとにすごいよね! 他にもいっぱい人がいる中でだよ!?」
そう言われると、確かに。
すごいんだ、わたし達って。
机の上でほんのり赤くした頬に杖をついて、ほぅっと惚けるアカネちゃん。一瞬中村くんの方を見たのをわたしは見逃さなかった。
この二人も、なんとなく進展してそうな感じがするんだよなぁ。
距離感はあんまり変わってないから、わたしの妄想かもしれないけど。そう考えると信憑性が一気に下がるな。
といいつつわたし達も、仲良くなってからの距離感はそんなに変わってるわけじゃないか……。