キミは当て馬、わたしはモブ。
「――佐久良」
ぎゅっ。
突然、背中に圧迫感が襲う。
耳元でささやかれた声は、反響して甘い痺れを生んだ。
……前言撤回。
「なっ、なっ……!」
何してんのこの人!?
振りほどこうともがくと、さらにキツく縛られる。
なんとか顔だけ振り向いて、キッと睨みあげるも……眼鏡に自分の赤い顔が映ってしまっていた。
「何してんの、帝塚くん!」
そう問えば帝塚くんはきょとんと目を丸くして、
「俺達、合法的にこういうことができる仲になったんじゃないんですか?」
「もっと場所を考えてよ!」
「どこならいいんですか」
「どこって、い、家、とか……っじゃない! 離せ!」
「佐久良、良い匂いしますね」
「キモすぎる!」
前々からキモさの片鱗は見せていたけど、恋人を合法的にセクハラできる関係だと思ってるのはさすがに異次元すぎる。
べ、別に嫌ではないけど、本当に場所を考えてほしい!
帝塚くんもわたしがこんなことで嫌いにならないと思ってるからやめないんだろう。
わたし、ナメられてるな?
「わー、イチャイチャだぁ……」
恥ずかしそうに指の隙間からこちらを見るアカネちゃん。
もうなんでもいいから、持ち前の怪力でこの男を引き剥がしてはくれないでしょうか。