キミは当て馬、わたしはモブ。



「二人って、もうお家デートするような仲なんだね……?」



 体育の時間、アカネちゃんと柔軟を組んでやっていたときのこと。


 慎重そうな面持ちで聞いてきたアカネちゃんに、前屈をしながら答える。



「まだ一回ウチに来たぐらいだけどね」



 それは全然デートなんてものじゃなかったけど。お邪魔虫が一匹いたせいで。


 グッ、とアカネちゃんがわたしの背中を押す力がこもった。そしてゴクリと喉を鳴らす。



「大人……っだね……!?」


「そ、そうなの?」



 「だってね!?」と彼女は声を張り上げるのと同時に、押す力が強くなる。わたしの足が裂けそうになる。痛い。
 


「こないだ優斗の部屋で見つけた漫画にあったんだけどね、男子って好きな女子と部屋で二人っきりだと、めちゃくちゃムラムラするらしいよ!」



 ……その情報、どうなんだろう。主に中村くんのプライバシー的に。


 だってわたし、中村くんってそういう漫画読むんだぁ……ってちょっと思っちゃってるよ。具体的にどんなものかはわからないけど。


 これ、プライバシー侵害に入らないかな。


 せめてドキドキって言ってほしかった。


 解釈違いっていえばそうなんだけど、ちょっと待てよと考えを巡らせる。

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