キミは当て馬、わたしはモブ。




 ……なんか、あんまり眠れなかったな。


 洗面所の鏡の前で、いかにも寝不足な顔とにらめっこしながら小さくため息を吐く。


 やっとなのかもうなのか、帝塚くんとみのるくんに会う日。


 そんな日に限ってこんな顔になるなんて、最悪だ。


 みのるくん関連の緊張もあるだろうけど、それよりもアカネちゃんの言ってたことが気になって寝付けなかった。


 わたしに……興奮する、帝塚くん。


 うまく想像できないけど、彼も一応男子だし、そういうこともあるのかなって。


 そんな思考に一旦なってしまったら、こっちも心の準備をある程度しておいた方がいいのかもしれないという気持ちになってくる。


 考えれば考えるほどいろんな妄想が止まらなくて、落ち着かなくて、こうなった。



「恥ずかし……」



 ちょっと浮かれてるのかも、わたし。


 冷たい水で顔を洗って頭を冷やす。


 親もお兄ちゃんも家を出た後の静まり返った空間。それがまた冷えた空気を演出していて、わたしは冷静になれた。


 そこへ、インターホンの音がひとつ鳴り響く。


 大きく鼓動が鳴った。


 あ、やばい。全然冷静になれてない。

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