キミは当て馬、わたしはモブ。


 ゲームを起動したら、オープニングムービーが始まった。


 色んなタイプのイケメンが一人一人ピックアップされて、台詞とスチルを見せてくれる。


 ムービー中の帝塚くんはそれに釘付けになっていて、わたしのことなんて見なかった。



「で、どれが佐久良の好きな人なんですか?」


「キミ」


「えっと……そういうことでは、なく……」


「ふっ、顔赤くない? ドキッとしたんでしょ」



 さっきのお返しだ。


 帝塚くんもわたしに振り回されてくれないと困る。



「そうですね……」



 仕返しができてちょっと満足していたわたしに、スッと腕が伸びてきた。


 腕はわたしの前を通りすぎ、ベッドの縁に着地。帝塚くんとベッドに挟まれる形になった。


 顔があまりにも近い。見下ろしてくる帝塚くんも無表情で何も言わなくて、緊張感で体が強張る。


 わたしが動けないでいると、彼の口元がゆっくり開いた。



「……しましたか、ドキッと」


「…………し、しました……」



 後ろはベッドだ。


 顔は近くて、今にも触れそう。


 あ、これ、もしかしてアカネちゃんの言ってたやつ――。



「ならよかったです」



 帝塚くんはゲームに戻った。


 ……。別に、期待とかしてなかったけどね。


 でもなんか、ムカついたから横腹にパンチを食らわせた。



「痛っ。なんです……痛っ、ちょっ、佐久良?」



 この、ヘタレ。ふざけんな、このっ。


 部屋で二人きりなんだからなんかしろよっ。


 いい雰囲気に何回なったと思ってんだよ。

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