キミは当て馬、わたしはモブ。


 やめだやめだ。期待してもどうせ裏切られる。


 帝塚秀司って男はいつもそうだったじゃないか。


 ここからは真面目にゲームをプレイする!


 パチンと両頬を叩いて、気合いを入れ直した。



「佐久良、やる気ですね」


「うん! ちなみにわたしの好きだった人、さっき帝塚くんがふざけてる間に流れてったから!」


「えっ!」



 ショックを受けた顔でゲーム画面に向き直る帝塚くん。



「ど、どれですか?」


「タイトル画面にはいないから」


「いつ出てくるんですか?」


「とりあえず三十分はやらないと」



 具体的な数字を言った途端、帝塚くんの目の色が変わる。


 プロローグが三十分くらいだ。そこではメインヒーローとのイベントが繰り広げられるため、みのるくんは一切出てこない。



「やりましょう」



 キリッとした顔の帝塚くんを見て、わたしも同じように真剣に向き合った。


 そうしてわたし達はようやく、当初の目的のために並んで画面にかじりつく。


 プロローグは高校の入学式。


 何度も何度も見た。わりとスキップしてた気もするけど。


 彼は不良っぽい男子で、ヒロインに対して常時冷たい。仲良くなっていくにつれてツンデレになっていく……そんなほんわかストーリー。

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