キミは当て馬、わたしはモブ。
「この人、佐久良みたいですね」
なんて帝塚くんが言うので、反射的に反論した。
悪い癖だ。
「わたし、こんな不良っぽくない」
「ああいえ、そうではなくて。あ、ほら」
テキストを進めた先で、彼がぶっきらぼうな口調で話す。
ヒロインが怪我をしている彼を見つけて、どうしても手当てをしたいと懇願するシーン。
『はぁ……勝手にしろ』
「初めの頃の佐久良にそっくりですね」
「…………」
確かに、否定はできない。
帝塚くんが楽しんで言ってくれるからよかったものの、そのときのわたしの態度は悪かったと思う。
いや、だって、今こんな風に一緒にゲームをする仲になるとは思ってなかったし……。
そもそも、好きになるのも予想なんてできるはずないんだから。
別に責められてるわけじゃないのに、勝手に言い訳してしまう。
それくらい、消してしまいたい過去なの、それも。
「……あ、これでプロローグは終わりですかね?」
という帝塚くんの声に画面を見ると、背景が教室へと変わっていた。
そうだ。これからゲームが本格的に始まって、ヒロインが様々な男の子と恋愛していく。
次の瞬間、画面に映ったのは……。