キミは当て馬、わたしはモブ。



「この人、佐久良みたいですね」



 なんて帝塚くんが言うので、反射的に反論した。


 悪い癖だ。



「わたし、こんな不良っぽくない」


「ああいえ、そうではなくて。あ、ほら」



 テキストを進めた先で、彼がぶっきらぼうな口調で話す。


 ヒロインが怪我をしている彼を見つけて、どうしても手当てをしたいと懇願するシーン。



『はぁ……勝手にしろ』



「初めの頃の佐久良にそっくりですね」


「…………」



 確かに、否定はできない。


 帝塚くんが楽しんで言ってくれるからよかったものの、そのときのわたしの態度は悪かったと思う。


 いや、だって、今こんな風に一緒にゲームをする仲になるとは思ってなかったし……。


 そもそも、好きになるのも予想なんてできるはずないんだから。


 別に責められてるわけじゃないのに、勝手に言い訳してしまう。


 それくらい、消してしまいたい過去なの、それも。



「……あ、これでプロローグは終わりですかね?」



 という帝塚くんの声に画面を見ると、背景が教室へと変わっていた。


 そうだ。これからゲームが本格的に始まって、ヒロインが様々な男の子と恋愛していく。


 次の瞬間、画面に映ったのは……。

< 172 / 219 >

この作品をシェア

pagetop