キミは当て馬、わたしはモブ。
帝塚くんはメインヒーロールートへ順調に進んでいった。
一人でやっていたときはみのるくんのことしか気にしてなかったから気付かなかったけど、彼もなかなかかっこいい。
……帝塚くんは、ことあるごとにわたしに似てるって言ってきてウザいけど。
――そしてやってくる、告白シーンの直後。これがみのるくんの一番の見せ所だった。
今までたくさんアドバイスをしてくれて、支えてくれた彼と話すのだ。
これはどのキャラクターを攻略していても必ず見られるイベントで、ルートによって少しずつセリフが変わる。
『……そっか。頑張ったね』
目を瞑ったみのるくんの立ち絵。
帝塚くんはこの数時間ですっかりこのゲームにのめり込んだみたいで、「緒方……俺頑張りました……」と感情移入しすぎな言葉を呟いている。
『僕も、幼なじみとして誇らしいよ。まさかキミが、あんなにかっこよくて男らしい人と仲良くなるなんて』
みのるくんが表情を変える。
何度も何度も使われた、使い回しの笑顔差分。
瞬間、わたしの記憶がフラッシュバックした。
あのときのわたしには、確実に一枚絵が見えていた。
桜舞い散る背景の真ん中、みのるくんが満面の笑みでわたしのことを見送ってくる、その姿が。
今気付いた。あれはわたしの妄想だったんだ……。