キミは当て馬、わたしはモブ。
『――――幸せになってね』
彼は、いつも通りの表情でヒロインのことを見送った。
その後は、ヒーローとのいちゃいちゃが描かれてエピローグ、エンディング。
エンディングテーマだけが流れる部屋の中、わたしの心の中からふっと何かが抜け出ていって、体が軽くなる。
「終わり、ましたね……」
帝塚くんも気の抜けた声を出す。
わたしは一度だけこくりと頷いて、帝塚くんの肩に寄りかかった。
やってみた感想としては――こんなもんか、だった。
何年も溜めて封じ込めてきた気持ちを解放したにしては肩すかしというか。
いや……それくらい……。
ちらりと帝塚くんの方を盗み見る。
エンディングが終わり、タイトル画面に戻ったゲームを眺めて恍惚としたため息を吐く横顔。
囚われ続けていたわたしを引っ張り出してくれた、わたしのヒーローがそこにいた。
ずっと見ているとさすがに気付かれる。帝塚くんは力なく笑って、わたしの手をギュッと握った。
「危なかったですね」
「え、何が?」
「緒方みのるが現実にいたら、佐久良は俺のものになってくれなかったでしょうから」
その言葉を聴いて、わたしの悪癖が込み上げる。