キミは当て馬、わたしはモブ。
「……違うから。わたしがみのるくんを好きになったのは、みのるくんが現実じゃなかったからだよ。ただのキャラクターなら、わたしの好意を否定することはないから……」
「俺なら受け止めた上で、倍にして返してあげられますよ」
帝塚くんがドヤ顔で言い返してくる。
何を今更対抗心を燃やしてるんだか。
でもその通りだ。次元の違う片思いは、否定はせずとも肯定してくれるわけではなかった。
そこがゲームと現実の違い。
ゲームは起こることが決まってて、その中から選択肢を選んでいく。
現実は何が起こるかわからない。選択肢も無限にあって、どう転ぶか見当もつかない。
帝塚くんの座右の銘……なんか理解できちゃった。
「ね、ご褒美……終わったらくれる約束でしょ」
慣れないけど、頑張って甘えてみる。頬を彼の肩にすり寄せて、上目遣い。
「佐久良、欲求不満なんですか?」
「うるさいっ」
みのるくんより好きなんだって改めて確認できて、気持ちが止められないの。
帝塚くんだって余裕ように振る舞っておいて顔は真っ赤だし。わたしと同じ気持ちのくせに。
「仕方ないですね。欲求不満な佐久良のために、ご褒美をあげましょう」
「黙れ」
顔を近付けて――わたし達は黙った。