キミは当て馬、わたしはモブ。
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帝塚くんが帰った後。ゲームを元の場所に戻そうとしたけどやめて……ノートを手に取った。
わたしを縛り続けていた呪いのノート、夢小説。
みのるくんを克服した今でもやっぱり痛々しくって、黒歴史なのは変わらない。
もう見ることはないだろう。
でも……うん。消し炭にまでする必要はないかな。
これもれっきとしたわたしが歩んできた道だ。わたしが自分で選んで進み、行き止まりが来たから終わっただけの道。
だってヒロインはちゃんとメインヒーローとくっついたし、みのるくんも笑顔で見送ってくれた。
それ以上のことなんてない。
「ただいまー! 和花の大好きなお兄ちゃんが帰ってきたぞー!」
玄関から元気なお兄ちゃんの声が聞こえてきた。
わたしはノートを一度だけギュッと抱く。
これで決別。これが儀式。
――――さよなら、みのるくん。
間違いなく、大好きでした。
しんみりとした空気を壊すように、お兄ちゃんがドタドタと音を立てて二階に上がってくる。
わたしの部屋のドアに手をかけて、今にも死にそうな顔で。
「のっ、ののの和花……もしかして帝塚くん来てた?」
「……なんでわかったの」
「コップだよ、シンクのコップ! 家出るときは何もなかったのに帰ってきたら二つだけ置いてあるなんて、不自然だろ! それと、お兄ちゃんの勘がそう言っている!」
え……普通そんなのでそこまで予想できる?
ドン引きなんですけど。