キミは当て馬、わたしはモブ。


 一人だけで騒がしいお兄ちゃんを見てると、ぐだぐだ考えるのが馬鹿らしく思えてくる。


 余計な感情が全部どこかへ飛んでいって、残るのはおかしくて笑っちゃう気持ちだけ。


 お兄ちゃんは否定も肯定もしない人だったけど、なんだかんだわたしの気持ちを尊重してくれてたな。



「……お兄ちゃんも、ありがとね。いろいろ」



 急にお礼が言いたくなって、素直にこぼす。


 いきなりなんだってなるだろう。


 想像通りポカンと呆けるお兄ちゃんは、原因を探すために顎に手を当てて考え込む。


 そして、ポンと手を打って、



「はっ! まさかお兄ちゃんの方が大好きなことに気付いて、もう帝塚くんと別れたとか……!? 今日来たのは別れ話ってわけだな!?」


「別れてない!」



 相変わらず見当違いのことを言う。


 これぞお兄ちゃんって感じ。変な安心感があるくらいだよ。



「うーん……よくわからんが、お兄ちゃんは一生和花の味方だからな」



 そう言って、優しくわたしの頭の上に手が置かれた。


 表情も柔らかい。頼りになりそうだ、表情だけで言えば。


 わたし、知ってる。お兄ちゃんがこうやってかっこつけるときは……



「だから、帝塚くんと別れるときは真っ先に報告していいぞ。祝勝会をしよう」



 ほらね。


 しかもそれ、勝ってるのお兄ちゃんだけじゃん。



「もうっ、別れないってば!」



 腕の中の黒歴史。


 そして、戻しかけのゲームパッケージ。


 お兄ちゃんがそれを見つけて元気付けようとしてくれていたと知るのは、また後日。

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