キミは当て馬、わたしはモブ。
わたしだけのヒーロー
わたしの名前は佐久良和花。男女の幼なじみカップリングが大好物な、ごくごく一般的な高校生だ。
さて、今日も後ろの席の推しカプの会話に聞き耳を立てることにしよう。
「はぁ……モテたい」
「また言ってる。今のままじゃ無理」
「好きな人ににモテたい。好きって言ったら僕もって返してくれて、いっぱい一緒にいたい」
「だから……ん?」
「毎日一緒に帰って、寄り道デートなんかしたりして、夕日の綺麗なところでキスしてみたりしたい」
「ちょっと待って。好きな人って……」
「はぁ……なんであたしのこと好きになってくれないんだろ」
「えっ、……おい、ア、アカネ」
「全然脈ないし、諦めた方がいいのかなぁ?」
「いやあの、だ……誰」
「はぁ……」
「アカネ? き、聞こえてる?」
くっ……最高~~~~~!!
今まで見られなかった推しカプの新たな駆け引きに頬の緩みが止まらない。
中村くんに意識されてないことに納得いかないアカネちゃんは、違う角度で責めていくことにしたらしい。わたしの妄想の中では。
好きな人の存在を匂わせてみたり、中村くんの声はバッチリ聞こえてるけどわざと無視してみたり。
良い感じに動揺を誘えていて、なかなかうまく行ってるんじゃないだろうか。