キミは当て馬、わたしはモブ。
パッと目が覚めたら、一番に時間の確認をする!
そう決めていて目覚めたら、優斗の顔が目の前にあった。
「「うわああああああ!」」
お互いに大声を出して優斗が離れる。
「あ、アカネ、おまえ起きるなら言えよ!」
「えぇ!? そんなの無理に決まってるじゃん!」
驚きと大声のおかげで目が冴えて、時間を見たらいつも起こしてもらう時間より十五分も早く起きられていた。
けど優斗が来てるなら意味がない。
ていうか優斗って、いつもこんな早く来てたのかな?
「……ほら、起きたんなら早く着替えて下来て」
優斗が部屋の外に出ようとするから、思わず制服の裾をつかんでしまった。
不思議そうに優斗が振り返る。
え、あれ? なんであたし、掴んだんだろう。
「えっと……あの……」
何も出てこない。強いて言えば、おさもぐの台詞だけだ。
幼なじみちゃんが、毎朝主人公くんに言う言葉。
「おはよ……ゆーくん」
あたしの言葉に反応して、優斗の顔がカッと赤くなった。
「は、はぁっ!? それ、なんで……!」
「……何が? 優斗のことあだ名で呼んでみただけだけど?」
「僕のことゆーくんなんて呼んだことないだろ! さては、見たな……っ!?」
「何を? 優斗がどんなものを好きでも、あたしはいいと思うよ?」
「あっ、アカネ……っ」
顔を真っ赤にして、あたしに一発チョップをかましてくる優斗。
そのチョップすらも優しくて、なんだか泣きそうになった。