キミは当て馬、わたしはモブ。


 ――――あたしは、どうやら優斗にそういうことらしい。


 なんか変だなって考え出したのは、和花ちゃんや帝塚くんと一緒に行った水族館の日。


 和花ちゃんに告白しようとする優斗の真剣な眼差しに、嫌な気持ちになったときから。


 でも、そのときはただ大事なおもちゃを取られたくないっていうような、子供っぽい感情だったと思う。


 それから、和花ちゃんと帝塚くんがどんどん仲良くなっていくのを見て、いいなぁって羨ましくなっていって。


 あたしも誰かと……って想像したときに、一番に優斗が浮かんできちゃったり。


 優斗って、好きな人いるのかなって考えたり。


 だんだんと、意識していったっていうか……。


 赤くなっているであろう顔を両手で押えて、ふぅとため息を吐く。


 なんとか優斗を説得して登校することはできたけど、隣に座る優斗のことをうまく見られない。



「アカネ、まだ顔赤いけど、ほんとに大丈夫か?」



 そんなあたしの心情を知らない優斗は、何気ない様子でおでこに手を当ててきた。



「……っっ!」



 今、そうやって触れられると心臓がっ……!


 どうやってごまかそうかと視線をさまよわせる。すると、教室の入り口から和花ちゃんがなにやら紙束を抱えて急いで入ってくるのが見えた。


 ちょうどいいところに!



「和花ちゃん、おはよー!」



 あたしは不自然に声を張り上げて和花ちゃんを呼ぶ。


 和花ちゃんはあたしに柔らかく笑顔を返してくれたけど、なんだか居心地の悪そうな顔をしていたのを覚えている。

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