キミは当て馬、わたしはモブ。


 わたしのイチオシポイントは、中村優斗くんの平凡な名前、中の上くらいの容姿。それに対して辻アカネちゃんのどう見ても美少女であるのに気取らない性格だ。


 お互い、ズバズバと思ったことを言っても仲が悪くならないところも、この幼なじみの胸キュンポイントだよね。


 そんなわけで、わたしの日課はこの推しカプの日常を少し傍観することである。


 ただし、これは誰にも気付かれてはいけない。


 佐久良和花はオタクじゃない。アニメや漫画はおろか、ゲームも詳しくないという設定だ。決して乙女ゲームなんてしないし、ライトノベルも読まないのだ。



「どうやったらモテるんだって言われれば、まぁ顔だな」


「顔?」


「そう。世間ではイケメンや美少女がモテるんだよ」


「あたしって美少女?」


「不細工ではないけど、腕力ゴリラな時点でお察しだよな」


「モテないと?」


「モテないな」


「めっちゃ殴りたい」


「そこで手を出した時点でゴリラ認めてることになるからな?」


「ぐぬぬ……そういう優斗だって、ブスではないけどモブだよ!」


「僕は別にモテたいわけじゃないし」


「ねぇ優斗、知ってる? 人間には承認欲求というものがあってね……」


「僕のことは僕自身が認めてるから問題ないんだよ」


「なにそれかっこいい! ……でも、なんか負け犬の遠吠えみたいじゃない?」


「うるせぇ」


「やっぱりモテたいんじゃん」



 あーーー、優アカ尊い……!


 中村くんの、一人称が僕なのに口の悪いところ最高だよ~~~!

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