キミは当て馬、わたしはモブ。


 いつの間にか下がっていたあたしの頭を、優斗は乱暴にかき回した。



「僕は、アカネに彼氏ができるまで彼女は作らない、だろ。それなら先にアカネが好きな人作れよ」



 もうできたんだよ。でも、言える相手じゃない。


 優斗にとってあたしなんて異性枠でもないだろう。


 こうやって二人きりなのに、ベッドの上なのに、怖いくらいに普段と同じ態度。


 意識すらしてもらえてないのに、どうすればいいかなんてわからない。


 そんなとき、おさもぐのシーンを思い出した。主人公は、幼なじみちゃんのどういうところにドキドキしてたかな。


 あたしは、頭の上に置かれたままの優斗の腕を掴んで、それを自分の胸に引き寄せた。



「え、――あ、アカネ?」



 幼なじみちゃんみたいに特別大きいわけじゃない。でも、あるにはある。


 お願いだから、あたしはちゃんと女なんだってことを意識してほしい。



「優斗、あたしって……魅力ある?」



 縋るように優斗を見上げる。


 優斗は、それまで目を見開いていたのを閉じて、あたしを睨んできた。



「……色気は、ない」


「やっぱりないかなぁっ!?」



 悔しい、こんなに頑張って胸当ててるのに……っ!


 渋い顔されるくらい、少しの魅力も持ってなかったなんて……。

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