キミは当て馬、わたしはモブ。
優斗はポカンと口を開けてあたしを見上げている。顔は赤いままだけど。
微動だにしなくなっちゃった。ちゃんと聞いてんのかな。
「優斗! あたし! 嬉しかったの!」
「ああああもうわかったから! 嬉しかったんだな!? 僕にドキドキされたのが!」
「そう!!」
大きく頷いた。
なんだ、伝わってるんじゃん。
顔を隠すように手で覆って、はぁ~っと息を吐く優斗。
ため息つきすぎじゃない? あたし、そんなに呆れられてるの?
「馬鹿だろ……」
「うん、あたし頭は優斗よりよくないよ?」
「開き直るな」
冗談を言ってみたら、噴き出して笑ってくれた。
それだけであたしはドキドキするっていうのに。
あたしはついつい欲が出てしまって、いそいそと優斗の隣に座る。
「で、一体どこがドキドキポイントだったのかね? ゆーくん~?」
そして、恋人の存在を聞き出そうとする親戚のおじさんよろしく肩を組んだ。
「し! て! ない! って言ってるだろ!」
予想できてたけど、うっとうしそうに手を弾かれる。
へへへっ、こいつぁ調子に乗りすぎやしたかね。
すっかり浮かれたあたし。笑顔が直らなくて、優斗に苦い顔をされる。
「もう……なんなんだよ、こいつ……」
「辻アカネちゃんだよ~♪」
「歌うな!」
とりあえずあたしの浮かれは、一ヶ月は続いたのだった。