キミは当て馬、わたしはモブ。


 早起きは、成功だった。


 でも寝覚めがよくない。


 なんだ、あのもやもやする夢。夢なんだからもっと夢ある夢を見せてほしかったよ。


 ほとんど初めての、優斗が部屋にいない朝。


 気を抜けばまた目を閉じてしまいそうになるのに抗って、さっきからずっとうるさいアラームに手を伸ばす。


 パジャマを脱いで、制服のシャツを腕に通そうとしたとき。



「……あ」



 慣れた手つきで、優斗が音を立てずにドアを開けた。


 声を出したのは、あたしだったか優斗だったか。たぶん、どっちも。


 優斗はいつも通りあたしを起こしに来ただけだ。それしてはちょっと早すぎる気もするけど。


 だから、優斗は何も悪くない。


 あたしはというと、おさもぐに似たようなシーンあったなぁなんて考えていた。



「おっ……起きてるなら言えよ馬鹿女っっ!!!!」



 優斗はかつてないほどの大声を出して、風圧を感じるくらい思い切りドアを閉める。


 それから爆音で階段を駆け下りるのと、何か叫んでお母さんに告げ口しているのがわかった。


 あたしは今、優斗に着替えを見られた。


 見た優斗はめちゃくちゃ動揺していた。


 それはいい。それはいいんだよ。


 あたしは、それよりね、



「優斗って、いつも何時に起きてんの……!?」



 一生優斗を起こせないんじゃないかって絶望感にさいなまれていた。

< 206 / 219 >

この作品をシェア

pagetop