キミは当て馬、わたしはモブ。


 ……優斗が、おかしい。


 あんまりあたしと目を合わせてくれないし、どこかよそよそしい。


 なんか怒ってるのかなぁ。原因が全然わからないから、謝りようもない。


 でも話しかけたら返事はしてくれるんだよね。


 学校に着いてもそれは変わらなくて、胸の奥がムズムズする。


 あたしの気のせいだったらいいんだけど……。


 横目で優斗を覗き見すると、次の授業の準備のために教科書を取り出していた。


 優斗の気を引きたい。そう決意してわざとらしく息を吐く。



「はぁ……モテたい」


「また言ってる。今のままじゃ無理」



 あ、よしよし。反応してくれた。


 せっかくだから、ちょっと攻めてみよう。



「好きな人ににモテたい。好きって言ったら僕もって返してくれて、いっぱい一緒にいたい」


「だから……ん?」


「毎日一緒に帰って、寄り道デートなんかしたりして、夕日の綺麗なところでキスしてみたりしたい」


「ちょっと待って。好きな人って……」


「はぁ……なんであたしのこと好きになってくれないんだろ」


「えっ、……おい、ア、アカネ」


「全然脈ないし、諦めた方がいいのかなぁ?」


「いやあの、だ……誰」


「はぁ……」


「アカネ? き、聞こえてる?」



 あたしは自分の腕をまくらにして机に突っ伏した。



「気になるの? あたしの好きな人」



 顔だけ優斗の方に向けると、目を見開いて固まっている姿であたしを見ている――。


 と思ったら、眉間にしわを寄せてさっと前に首を動かしてしまう。


 うーん、やっぱり機嫌がよくない……。今のあたしの態度も気に入らなかったのかも。

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