キミは当て馬、わたしはモブ。


 この状況のどこが楽しそうに見えるんだろう。


 有言実行しようとして、自分からアカネちゃんに関わりに行こうとする姿勢はいいけど、そこにわたしを巻き込むのはやめて。


 いや、やっぱりよくない。アカネちゃんに近づくな。



「……なんか、明るくなったよね、帝塚くん」



 キョトンとした表情でアカネちゃんは帝塚くんを見上げる。


 えぇ……待って、こんなに上目遣いが似合う女の子なんている? 中村くんとじゃ絶対見られない仕草――身長差的な意味合いで――なんだけど……。



「隠すことないじゃん! やっぱり付き合ってるんだ?」



 嬉しそうなアカネちゃんの、めちゃくちゃ可愛い満面の笑みに対して起こる、わたしだけが感じ取れる悪寒。


 帝塚くんは眼鏡が曇りそうなほど冷ややかな目付きでわたしを見た。


 こっち見られてもなぁ。わたしも被害者の方なんだけど。



「……ッスゥーー」



 深呼吸して落ち着こうとしてるんだろうけど、吸ってるだけで吐いてないよ。動揺してるのバレバレだよ。


 わたしはアカネちゃんに強気に出るなんてできないし、帝塚くんもこの調子。



「アカネ、そこまでにしとけ」



 そのときに頃合いを見て止めてくれた中村くん。


 アカネちゃんの肩を掴んでの仲介です。尊い。

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