キミは当て馬、わたしはモブ。
「佐久良さんは付き合ってないって言ってるだろ」
「えぇでも」
「でもじゃなくて。二人に迷惑かけてるのわからないのかよ」
あ、あれ……なんか中村くん、結構ガチめに怒ってない?
いつものじゃれてる感じの会話じゃないから、アカネちゃんもかなり焦ってる。
確かにわたしは帝塚くんとの仲を勘違いされるのはいやだけど、そこまで怒るほどのことでもないんだけどな……。
中村くん、優しいなぁ。
「えっと……ご、ごめん、変なこと言って」
一拍置いてから、アカネちゃんがわたしに謝ってきた。
「ううん、大丈夫」
それ以上、何を言えばいいか言葉がでない。
「もうそれ、言わないでくださいね」
すると帝塚くんが続けてきた。これで本気で付き合ってないし、本気で嫌がってるのは伝わったかな。
アカネちゃんに嫌な感じの言葉を言いたくないからって、帝塚くんに言わせちゃったなぁ。
ちょっと、申し訳ないかも……。
「俺、好きな人いるので」
帝塚くんの発言に、ピン、と張りつめる空気。誰もがその続きを求めたからだ。
あー、それ言うんだ。
帝塚くんはさ、イケメンなんだよね。
彼氏にできたらそりゃあ嬉しい。
女子達は自分であることを願って全力で聞き耳を立てるし、男子達は自分が狙っている子でないことを願って全力で聞き耳を立てる。