キミは当て馬、わたしはモブ。


 まぁわたしが無視してあげてないだけで、わたしがいい人だから会話が続いてるだけだよね、きっと。


 ていうか。



「あの……なに?」



 あんまりじっと見つめないでほしいんですけど。



「佐久良は、好きな人がいたことはありますか」


「えっ……」



 前の質問に近いけど、少し違う。


 その意味を理解して、ドキリと心臓の音がした。


 好きな、人……。は、いない。


 いたことも、ない。


 そう言えばいいだけだった。


 でも、そう言うと帝塚くんはまた言ってくるだろう。


 「嘘ですね」って。



「もしいたなら、告白しようとしたことはありますか」


「……ないよ」


「どうしてですか?」


「勇気がないから……あと、希望もない」


「どうして決めつけるんですか?」


「決めつけるもなにも」



 その人は……。



「……って、わたしは好きな人も、好きだった人も、いないんだってば!」


「あぁ、おしい」


「おしいとかじゃないって!」



 ふー、危なかった。好きな人がいないのは本当なのに、なんか色々想像しちゃったよ。


< 26 / 219 >

この作品をシェア

pagetop