キミは当て馬、わたしはモブ。
ただ、プレゼン力だけはずば抜けてるんだよね。
わたしが幼なじみキャラを好きになったのも、お兄ちゃんから熱烈なプレゼンを受けたからだし。
好きなものに一直線なのは、悪いことではないんだけどね……。
乙女ゲームの共通ルートをスキップしつつ、目当てのキャラに寄った選択肢を選んでいく。
こなれた作業と化してるけど、なかなかむなしいんだ、この時間。
今、わたしの恋の相手は画面の中の人でしかないんだってことを味わわされる時間。
『おまえは、黙って俺の言うこと聞いてりゃいーんだよ』
俺様系は……正直全然好みじゃない。
全然ときめかないわけでもないけど。
わたしはもっと、強引に手を引いてくるような人より、歩幅を合わせて隣を歩いてくれるような人がいいなぁ。
「ただいまー」
玄関からお兄ちゃんの声がした。
もう帰ってきたんだ……今日はサークル活動はなしかな?
ドタドタドタ、落ち着きのない足音がわたしの部屋に近付いてくる。
「和花!」
バーン! とドアが開け放たれた。
頼むからノックをしてください。
「お兄ちゃん、ノックしてから入って。じゃないとこれからは返事しない」
「妹が急に反抗期に!?」
「違う! でも反抗期だったとしてもノックはして!」
わたしが着替え中だったらどうするんだろ……。危機感のない人だ。