キミは当て馬、わたしはモブ。
少女漫画なら退場してた
わたしは新しい恋を求めて、周りを観察し始めることにした。
視界の端でチラチラと横切ってくる眼鏡の何かが邪魔すぎて、全然集中できてないけど。
「佐久良、聞いてください」
「嫌です」
「きーいーてーくーだーさーいー」
「ぎゃっ!」
耳元で喋られた!
帝塚くんの低めの声が反響して、ビクッと肩が跳ねた。
わたしの顔がとてつもなく熱くなる。
い、いくら帝塚くんでも、そういうのはダメってわかるでしょ……!?
なのに帝塚くんの顔はどう見たって平常で、それどころかわたしが赤くなっている理由がわからないというように首を傾げていた。
こ、こいつ……っ! やっぱり許せない!
なんなんだろう、距離感がおかしいよ。わたし絶対、帝塚くんに友達だと思われてる。しかも、男友達だと思われてるよ。
「作戦を考えたので聞いてください」
「やだっ! 絶対やだーっ!」
わたしは逃げ出した。逃げるしかこいつから離れられる方法がなかった。
帝塚くんが近くにいたら、絶対恋人なんてできっこない!
危なかった。わたしがこんな考えをできるようになったのは帝塚くんのおかげ……なんて勘違いをするところだった。