キミは当て馬、わたしはモブ。
しばらく廊下を走っていたら、学年主任の先生を見つけて急ブレーキした。
あの人、廊下を走ってる人がいたら容赦なく反省文書かせるからなぁ。
「うわっ!」
でも、後ろに誰かいたのか、驚いた声と共に思いっきり後ろから突撃される感覚。
えっ。
わたしの体が前に倒れる。
高校生にもなって、廊下で転ぶなんて嫌なんだけど……!
ぐいっと誰かに引き寄せられる。誰かっていうか、わたしにぶつかってきた人だけど。
抱きかかえるみたいにお腹に手を回されて、わたしの体が止まる。
「おなっ……お腹お腹……!」
助かった、なんて考える余裕もなかった。
回ってきた手は男子の手だ。それが、最近ちょっと太ったわたしのお腹に触れている。
「いやぁ! 離してーっ!」
自分勝手だとはわかりつつ、その人の手を剥がしていっきに距離を取った。
でも、女子にとってこれは死活問題――!
「ご、ごめん……僕、変なとこ触った?」
「あっ……」
わたしが振り向いたことで、ようやく相手の正体がわかる。
なんでわたし、気付かなかったんだろう。
今までずっと声だけでも聞いてきたのに。
「な、中村くん……」