キミは当て馬、わたしはモブ。
ま、まともに話すのは始めてだ。この間のはただの仲介で、会話と呼ぶには寂しすぎる。
危害を加えられたのか助けられたのかよくわからない状態で、ありがとうと言うべきだろうか。
いや、そんなことより。
わたし――中村くんにお腹触られたな?
最悪。今までのどんな場面よりこの言葉が似合うことはなかった。
今すぐ教室に帰りたい。同年代の男子にお腹掴まれることを比べたら、帝塚くんのアホみたいな絡みなんて米粒くらいちっぽけだ。
「えーっと、今度からはもうちょっと周りを見て立ち止まるね!」
さよなら! と踵を返そうとするわたしを見て中村くんは全力で止めてきた。
「待って!」
うっ、腕を掴まれた! それもただの腕じゃない、二の腕を!!
なんで中村くんはことごとく女子の気になる部位にダイレクトアタックしてくるの!?
「もう一回、謝らせてほしいんだ」
手の力が抜けて、するりと二の腕の圧迫感が薄れていく。ほっ。
「アカネがやったこと、本当にデリカシーに欠けてたと思うから……」
「えっ、いやっ、もう十分だよ」
静かに首を横に振る中村くん。