キミは当て馬、わたしはモブ。


 選択科目の選択に後悔しつつ、この件は後回しにしよう決断した。


 この授業が終わったら理科室を覗きにいこう。壁に元素記号表があったはず。スマホを使うなんてナンセンス!


 なんだかんだで謎解きを楽しんでしまっている自分がいる。


 もしこれが帝塚くんが作った謎だった場合、彼には将来クイズ作家になってもらうよう説得したい。



「じゃあここの問題、辻さん」


「はーい!」



 しっかりと宿題をやり終えたアカネちゃんは、意気揚々と黒板に答えを書いていた。



「全然違います」


「うそぉ!?」



 ……正解してるかどうかは、別だったみたいだけど。



「代わりに……佐久良さん」



 前の席のわたしにとばっちりが来てしまう。


 でも、ごめん! と手を合わせて謝ってくるアカネちゃんに免じて許しちゃお。



「……この問題、そんなに難しいですか?」



 わたしも堂々と間違えた。


 なんてこった。しかも先生が問題作りに不安を覚え始めてるよ。



「しょうがないですね……。帝塚くん、お願いします」


「えっ。あ、はい」



 急に指名された帝塚くんは、パッと顔を上げて、俺の番でしたっけ……? とぼやきつつも前に出てくる。


 カツカツとチョークで書いていく文字は、フォントみたいに整っていた。



「正解です。……はぁ、やっとだ」



 先生の安堵なんてどうでもいい。


 わたしの目は、帝塚くんの文字で頭がいっぱいになっていた。


 やっぱり、あの手紙を書いたのは帝塚くんだ。

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