キミは当て馬、わたしはモブ。
「はぁ、はぁ……うぇっ」
……自分の体力がないのを忘れていた。
この角を曲がれば家庭科室というところでわたしは体力を失い、壁に寄りかかって心臓を整える。
あと……ちょっと……なのに………。
最後の力を振り絞って、壁を伝いながら一歩十秒くらいのペースで歩き始めた。足はガクガクで動かないのに、どうしてこんなに頑張るのか、自分でもわからない。
「佐久良さん」
ふと、小さく名前を呼ばれた。
それは曲がり角の壁を掴んだ先にいた、中村くんだった。家庭科室のドアの前で、膝を付いて中を覗いている。
そうだ。中村くんは見た瞬間に答えがわかってたんだっけ。
声を出そうと口を開けると、しぃ、と人差し指を立てる中村くん。
よくわからなくて首を傾げると、手招きをされたので素直に近付いた。
「何かあるの?」
中村くんに合わせて小声で質問する。
「告白」
こっ……。
告白!?
あっ! そういえば今朝、帝塚くんはわたしに聞いてほしい話があるって……。
それってもしかして、今日のことを言ってたの!? 相変わらず行動力がすごすぎるよ……!