キミは当て馬、わたしはモブ。



「はぁ、はぁ……うぇっ」



 ……自分の体力がないのを忘れていた。


 この角を曲がれば家庭科室というところでわたしは体力を失い、壁に寄りかかって心臓を整える。


 あと……ちょっと……なのに………。


 最後の力を振り絞って、壁を伝いながら一歩十秒くらいのペースで歩き始めた。足はガクガクで動かないのに、どうしてこんなに頑張るのか、自分でもわからない。



「佐久良さん」



 ふと、小さく名前を呼ばれた。


 それは曲がり角の壁を掴んだ先にいた、中村くんだった。家庭科室のドアの前で、膝を付いて中を覗いている。


 そうだ。中村くんは見た瞬間に答えがわかってたんだっけ。


 声を出そうと口を開けると、しぃ、と人差し指を立てる中村くん。


 よくわからなくて首を傾げると、手招きをされたので素直に近付いた。



「何かあるの?」



 中村くんに合わせて小声で質問する。



「告白」



 こっ……。


 告白!?


 あっ! そういえば今朝、帝塚くんはわたしに聞いてほしい話があるって……。


 それってもしかして、今日のことを言ってたの!? 相変わらず行動力がすごすぎるよ……!

< 49 / 219 >

この作品をシェア

pagetop