キミは当て馬、わたしはモブ。
何もしないって決めたのはわたしだ。なのに今、わたしはちゃんと話を聞いてあげたらよかったと思ってる。
聞いていれば、止めることができたのに……って。
「つ、辻さんも解けたの? あの謎……」
「一向に解こうとしないから、僕が無理矢理解かせた」
あぁじゃあ、中村くんは全部わかってたんだ。あの手紙が、ラブレターだったってことまで。
そりゃあ、中村くんは止めないよね……。
中村くんの真剣な表情は、わたしの胸を痛めた。
中村くんはアカネちゃんの幸せを願って背中を押すのかもしれないけど、それはわたしにとって正反対の思想だから。
……なんでわたし、中村くんみたいに帝塚くんの恋を応援してあげられないんだろう。
かといって、この状況に割り込もうとする勇気もない。
わたしは大人しく、中村くんと一緒に家庭科室を覗くだけ。
向かい合っている帝塚くんとアカネちゃん。
何かを話してるみたいだけど、少し遠くて、声は聞こえない。
……というか。
なんなの、あの、帝塚くんの手の中にある無数のバラの花束は。
それを渡そうとしてるみたいだけど……。
「帝塚くんと付き合ってくれたら、僕も楽になれるのに……」
中村くんがこぼした言葉に、ギクリと体が硬くなる。