キミは当て馬、わたしはモブ。



「後はここで待ち伏せして、この百本のバラを渡すだけでした……」



 フラれた(フラれてない)ときのことを思い出して、帝塚くんはまた暗くなっていってしまった。


 やっぱり、帝塚くんでも告白が成功しなかったら落ち込むんだなぁ。


 帝塚くんに元気がないと調子が狂う。なんというか、図太いところがキミの良いところでもあると思うんだけど。



「告白はした?」


「はい……『一年のときから、あなたに目を付けていました。俺の気持ち、受け取ってください』と……」


「言葉選びおかしくない……?」



 目を付けてたって、普通告白に使わないよ。



「でも、この言葉が一番しっくり来たので」


「結果、なんにも伝わらなかったわけだけど」


「もっと日本語の勉強を精進します」


「そういうことでもないと思うな……」



 帝塚くんってちょっとずれてる。


 ずれてる男子と、鈍感な女子か。そりゃうまくいかないよ。



「返事はどんな感じだったの?」


「『ありがと! でもこんなにもらえないから一本だけもらうね!』でした」


「あっさり無自覚にフッてるね」



 まぁでも、方法はロマンチック……だったかもしれないけど、突然百本のバラを渡されたって困るだけだよね。


 一本だけもらってくれたっていうのも、本当に優しさだったんだろう。

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