キミは当て馬、わたしはモブ。
「嬉しいですか? 俺がうまくいかなくて」
「ん……まぁ、そうだね」
嬉しいっていうか、安堵っていうか。
まだ大丈夫なんだって感じかな。
もし告白が成功してたら、わたしは遠くから悔しがることしかできなかっただろうしね……。
ごそごそと物音がしたので視線を合わせてみると、中村くんがカバンの中のものに渋い顔をしていた。
「あっ……僕、帰るね」
中村くんはわたしが気にしているのに気付いて、気まずそうな声で答える。
「アカネから電話来てた……」
そして、こっそりとわたしにだけ耳打ちしてくれた。
あー、それは。一緒に行くわけにはいかないね。
「えっと、また明日」
帝塚くんに悟られないように、微笑を浮かべて手を振っておく。わたしの動きに合わせて帝塚くんも手を振り始めたので、ひとまず大丈夫みたい。
「うん、ばいばい」
ちょっと困ったように苦笑する姿が、まさに彼女を待たせてる彼氏みたいな構図だった。
今から二人で帰るのかぁ。
……あっ。じゃあこの後すぐに帝塚くんを帰しちゃダメじゃん!