キミは当て馬、わたしはモブ。


 帝塚くんも帰り支度を始めてしまっている。


 時折バラの花束を見ては、哀愁漂う雰囲気を醸し出してるけど。



「あ、あのさっ」



 どうにか時間を稼がないと!



「どうしました?」


「わたし、教室に忘れ物したから、取りに行きたいんだけど!」



 よし、家で宿題をしたいとかなんとか言って、教科書とノートを取りに行こう!



「そうなんですか? じゃあ昇降口で待ってます」


「つっ、付いてきてほしいな」



 今昇降口に行ったら、鉢合わせちゃうかもしれないだろうが!


 ラッキーなのが、帝塚くんは完全にわたしと一緒に帰る気まんまんだったってことかな。



「え……いいです、けど……」



 不思議そうな表情だったけど、言質は取ったからね。やっぱり先帰るとか言い出さないでよ?



「……もしかして同情してます?」


「へっ」


「優しいんですね」



 なんかよくわからないけど、好感度上がってる。


 同情ね……。


 うん、全くしてないっていうわけでもないかも。


 いくら天敵でも、そんなに何度も悲しそうな顔されたら、嫌でも気になっちゃうよ。


 ていうか、気にしてほしかったって言ってるもんじゃん。


 変に素直なんだよなぁ……。こっちがやりづらくなるよ。

< 57 / 219 >

この作品をシェア

pagetop