キミは当て馬、わたしはモブ。


 教室まではなるべく怪しまれない程度にゆっくり歩を進めて、教室の窓から確認して、昇降口で念入りに周りを見渡した。


 ミッションコンプリート……!


 達成感に浸っていると、目の前に赤い色素が飛び込んでくる。


 帝塚くんが、わたしに向かって花束を差し出してきていた。



「よかったらもらってください」


「えっ。い、いらない……」



 そもそも、人にあげようとしてたものを他の人に渡そうとするな。



「そうですよね……うーん、どうしましょう、これ」



 家に帰ったら、事情を話さないといけなくなるし……ともらす帝塚くん。


 たっ、確かに持って帰りづらい。お姉さんから買ったんならなおさらだ。


 告白が失敗した、なんて言いたくないよね。


 でもわたしは本気でいらないよ。ここは曲げられない。



「捨てますか」


「うん……もったいないけど、それが一番いいと思う」


「頑張って勉強した検定に落ちたくらいの気持ちでいます」


「結構ショック大きいよ、それ……」


「そうですよ」


「……」


「結構大きいんです」


「………」



 そんなこと言われてもなぁ。


 わたしは、何もできないよ。


 してあげられないよ……。

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