キミは当て馬、わたしはモブ。


 帰ってスマホを見たら、アカネちゃんからラインが来ていた。


 ビックリマークや絵文字が散りばめられた、女の子らしい文章だ。



『今日ね、帝塚くんからお花もらったんだ! いい匂いするな~って思ってたら、ソープフラワーってやつだって優斗が教えてくれた! もっともらえばよかったー!』



 そして、赤いバラが一輪、水が入った花瓶の中に刺してある写真。


 端で控え目に写ったピースサインに、少し頬が綻ぶ。


 なんだ……告白は失敗したけど、全部ダメだったわけじゃないじゃん。


 あーあ。なんで悔しくないんだろうなぁ。


 だってさ、帝塚くん自体は何も悪くないんだもん。ウザいところはあるけど、そんなのわたしの態度が変われば向こうも変わるものだろうし。


 無理に、嫌おうとしなくてもいいのかなぁ。


 わたしが嫌なのは帝塚くんじゃなくて、推しカプが離ればなれになっちゃうことなんだ。


 ……中村くんは、アカネちゃんに彼氏ができたら離れて行こうとしてるのかな。



『帝塚くんと付き合ってくれたら、僕も楽になれるのに……』


『結構大きいんです』



 わたしは、中村くんの寂しそうな顔と、帝塚くんの苦しそうに笑った顔を思い出しながら、



『ソープフラワーってたぶん、水いらないよ』



 なんて返したのだった。

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