キミは当て馬、わたしはモブ。


 聞こえてきた女子の声の方向に目を向けると、校門を出る手前で女子が男子を呼び止めているのが見えた。


 わ、わぁ……結構人通りあるのに、勇気あるなぁ。ていうかここまで聞こえるって、すごい声量……。


 相手は……たぶん、帝塚くんかな、あれは。


 まあ彼はイケメンで有名だし、頭もいいし彼氏にできたら鼻が高いだろうね。


 ただ、彼が誰かと付き合うことになったなんて聞いたことがない。


 あれだけハイスペックだと、相手にも同じくらいのものを要求するのだろうか。


 どうやらフラれたようで、女子は泣きながら去っていた。


 わたしは『かわいそうだなあ』なんて思いつつも別にそこまで同情もしない。我ながら薄情だなと思う。



「……ん?」



 校舎を出ると、帝塚くんはまだ校門の前で立ち止まっていた。


 というより、こっちを見ていた。


 えっ、ちょっと……待って。


 帝塚くんは待ってくれない。ずんずんとこちらへ進んでくる。



「なになになに!? えっ、えっ!?」



 とっさに周りを見渡しても、誰もいない。どう考えても帝塚くんにロックオンされているのはわたしだ。


 わたし、帝塚くんに何かしたっけ!? ぶつかったとき、ちゃんと謝ったよね!? あ、謝り方がまずかった!?


 ずんずんずんずん!


 気付けば帝塚くんはわたしの目の前まできていた。

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